sky blue
青い空に 紙ヒコーキ。
































「・・・・隆志のアホー。」
誰も居ないのを良いことに、そう叫んだ。
梅雨の昼下がり。今日は晴れ、お天道様が久しぶりに顔を見せた。
いつも私の髪について色々言ってくる五月蝿い池田の授業をサボって、今日もいつも通り相棒の煙草と共にその一時間を潰すつもりだった。
・・・・・いつも通り、過ごすはずだった。
「何やってるんだ?」
私の一時間をぶち壊した原因、突然の来客。
その声に驚いて後ろを振り返った。同じ学年の奴だ。
「いつから其処にいた!?」
焦っている私の声にビビッたのか、相手は少したじろいだ。
「えぁ?・・・・・隆志のアホーって所から。」
聞かれた・・・・・。
その後のそいつの顔が忘れられない。
私がいきなり項垂れた所為か、相手は心配そうに声をかけてきた。
「だ・・・・・大丈夫か?相談なら乗るぞ・・・・・?」
「・・・五月蝿いわね、原因はアンタよ。それに男に相談乗られても嬉しくない。」
あぐらを掻いていた足を垂直に広げ、そのままコンクリートの上に寝転がる。
風が優しく私の髪を撫でた。まるで同情されているようだ。
「お前、確か五組の・・・・・。」
「この髪の色で大体分かるでしょ?話しかけないでよ。」
そう言って相手を睨んだ。目が泳いでいる。
私の髪は淡い栗色。銀色ピアスに校則違反物がいっぱい。有名人物らしい。
「ま、別にいいわ・・・・アンタなら喋りそうにないし、例え喋られてもどうでも良いし。」
「それはもともと聞かれてもよかったという事じゃ・・・・。」
「さぁ?難しいことは嫌い。」
その言葉に安心したのか、相手は私の隣に座ってきた。






「名前聞いてなかったな?」
「保田 悠里。」
自分には似合わない名前だ・・・・・と、口から吐き出すたびにそう思う。
「保田さんか・・・・噂には聞いてた。オレは青柳裕樹。」
「青柳ね・・・・。」
そう言って胸ポケットから煙草を1つ取りだした、それを口にくわえ慣れた手つきで火を付ける。
「よろしく、ゆーりって呼びな。みんなそう言ってるし。」
「遠慮しておく。」
「そう。」
そう言って煙草の香りを口に吸い込むと、肺に煙が流れ込んでくる。
「・・・・・煙草吸ってるのか?」
「文句でもあるの?」
そう言って睨んだあと、香ばしい香りを口から出す。
青柳はこっちを見ながら笑っていた。
「別に・・・・オレの友達も吸ってたしな。」
「ふーん。」
起き上がって、煙草をコンクリートに押し付ける、潰したところに黒い焦げた跡が残った。
「さっきの隆志って・・・・・。」
「彼氏。」
「あ・・・・気、悪くした?」
「別に。根掘り葉掘り聞かれるのはもう慣れたし。」
「隆志って・・・・あの不良の?」
「髪の色、ピアス付けてるだけで不良と決めつけるの?」
風向きが変わり、髪が風にふわふわと遊ばれる。
相手が黙ってるのを良いことに、そのまま続けることにした。
「じゃあ、どこからが不良でどこからが不良じゃないのか知ってる?」
「・・・・・知らない。」
しばらくして、俯いていた青柳がポソリと呟いた。素直な奴。
「・・・・ま、誰にも分からないことだと思うけどね。基準は人それぞれさ。」
煙草の箱を鞄に片づけながらそう言った。
「・・・・隆志は私の他にもう一人彼女が居たらしいよ。で、振られた。」
そう言って、鞄から1つの折り紙を出す。もちろん水色。
「あ、その噂は結構有名。」
「ふぅん。」
折り紙を折り目に沿って折る。
「何・・・折ってるんだ?」
その質問に少しだけ笑う。・・・・・気分が良くなってきた。
「彼氏とかに振られたらさ、こうやって紙ヒコーキ飛ばしてやるの。」
「・・・・・新手の呪詛か?」
「違う。恨みとかそう言うのをコイツに飛ばすの。」
慣れた手つきで折り紙を作り、そいつを空に向かって投げる。
紙ヒコーキは迷い無く空へ一直線に飛んでいった。
「まるで呪詛みたいだな。」
青柳がそう呟いた。
「だから・・・・違うって。空に全部消してもらうんだ。」
「?」
「まぁ・・・・分からなくて当然か。」
周りにクエスチョンマークを飛び交わせている青柳を見て軽く溜息を付く、そして水色だらけの色紙の中からまた新しく一枚取りだした。
「空色、見てると溶け込みそうじゃん?だから消してもらう、この嫌な気分全部。」
そう言ってまた一つ。嫌な気持ちが空に吸い込まれていった。
「空色・・・・・か。」
次は青柳が寝ころんでそう呟いた。
「私は好き。空を見てると自信が湧いてくるし。」
また一つ。
「へぇ。・・・・オレは見てると眠くなるけどな。」
また一つ。
「隆志のアホー。」
そう言いながら紙ヒコーキを力一杯空に飛ばす。
それを見て笑う青柳。
「面白いなぁ・・・・保田さんは。」
「青柳もやってみる?」
そう言って水色の折り紙を1つ青柳に手渡す。
「やってみるかな・・・・・・。」
青柳も起き上がって、器用に紙ヒコーキを作る。
「・・・・中間のアホー!」
青柳が飛ばした紙ヒコーキも、空がきちんと受け止めた。
しばらく二人で紙ヒコーキを飛ばしていた。

「そういえばさ、何で空を見てると自信が湧いてくるんだ?」
紙ヒコーキを飛ばし終わったあと。青柳が私に尋ねてきた。
「・・・終わりが見えないからじゃない?まだまだチャンスはある。急ぐ必要はない。と。」
「面白い人だなぁ・・・・本当に。」
「青柳も私から見たら面白いけど?中間の・・・。」
「あ、じゃあもう一つ質問。」
私の言葉を遮って青柳がそう言った。
「何で紙『ヒコーキ』?」
「それは・・・・・私の紙ヒコーキが完全じゃないから。」
「何処が完全じゃないんだ?」
私が折って残しておいた紙ヒコーキを見ながら青柳はそう言った。
「気持ちをちゃんと乗せてない。」
「呪いか?」
「色々。・・・・・呪いにしつこいぞ?」
「だって保田さんが乗せそうなのは呪いとかそう言う系っぽいし。」
「青柳は何だ?片思いが両思いになるようにか?」
その言葉に二人の顔がくしゃくしゃになって。

「くっ・・・・・・あはははははは!」

二人で笑いあった。

自信が湧いてくるのは 終わりが見えないから

眠くなるのは 終わりが見えなくて疲れたから・・・・・?

私の紙ヒコーキは不完全。空に預けるにはまだまだ弱い。

空色の下 二人の女子と男子の声が空に吸い込まれていった。




























「あ、携帯のメルアドか番号教えて?」
「ええ!?俺の!?」
「アンタのこと気に入ったから♪」


Fin


どさくさに紛れて裏舞台(NGシーン)

悠「こうやって紙ヒコーキ飛ばしてやるの。」

ヒュウウウウウ。(風)

青「・・・・落ちたぞ?」
悠「・・・・・・・。」
本条飛鳥
2003年06月21日(土) 00時05分02秒 公開
■この作品の著作権は本条飛鳥さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ふぅ、桃助に感謝♪ですw
名字付きの飛鳥です皆様今晩は〜。
テーマ統一小説!無事に出せましたw短いし、内容が薄くてごめんなさい;;(言い出しっぺのくせに)
第一回と言われてますが続くかどうか分からない;
それでも皆様に見てもらえると嬉しいですw

ああ!忘れてた;
桃助
じょう

計都
侍忍者
が参加してるので見てもらったら嬉しいですw
他の方々の美麗小説を見て癒されてください〜!

この作品の感想をお寄せください。
楽しかったー♪ なんだか2人のやりとりがとっても好きです。ある日の一場面って感じで、読んでて落ち着けました♪呪詛は笑った笑った(^^)紙ヒコーキ、ちゃんと飛んでいったね♪ではでは、これからも、頑張ってね!遅レスごめんなさいででしたー…。 5 桃助 ■2003-06-23 20:21:44 u118019.ppp.dion.ne.jp
これは一つのある場面を描いてますね。やはりSS(短編)を書くときはある程度設定を限定しておかないと、最後の落ちが大変なのでそういう意味では良い設定だと思いました。シメもなかなかよく、すっきりした終わり方だったし。短いし内容が薄い?とんでもない短いけど内容は濃いですよ。小説は量じゃなくて内容なので飛鳥はとてもいい作品を出してくれたと思います。キャラクターの行動、表現力をもうすこししっかり書けばさらに話しが綺麗に締まるかもしれませんね。 3 AT ■2003-06-22 21:25:11 dialup-28.16.194.203.acc08-kent-syd.comindico.com.au
「…新手の呪詛か?」、ツボでした(笑)。「ヒコーキ」と「飛行機」、そうか、こんな違いが…納得(「するな!」by悠里)。…空白、「あぶり出し」あるかと思って、範囲指定かけてみてしまったのは秘密です(爆)。ではではぁ。 5 じょう ■2003-06-22 18:21:44 o093053.ap.plala.or.jp
飛鳥さ〜んvvとっても綺麗なお話だねぇ♪「青い空に 紙ヒコーキ。」ってところだけでも、かなり気に入ってしまいましたよ(笑 表現が上手くて良いなぁ。流れとかも自然で読みやすかったデス!面白い所もあったしww呪いだぁ〜(w これからも頑張って下さい♪♪ 5 ari ■2003-06-21 22:30:55 q150181.ap.plala.or.jp
初めまして・・・(でしたっけ・・・いや一度お会いしたような・・・)。前半の保田さんのだるさのような物をとても上手く表現されているなぁと面白く読み進めて呪いの所で大爆笑いたしました。雰囲気がとても良いですね〜。紙飛行機にちゃんと気持ちをのせてないという台詞もとても面白いです!あ、読者として一言お礼を・・・こんな面白い企画を立てて下さって、ありがとうございます!皆様とても面白くて個性もあって・・・。次回は是非参加したいです・・・。(小声) あ、それは置いておいて、これからも頑張ってください! 5 翡翔 ■2003-06-21 22:14:56 p5232-ip07higasisibu.tokyo.ocn.ne.jp
はははははは(大爆笑)最後のオチは私が書けなかったやつじゃないですか(コメントには書いたけど)じゃなくて!!(怒)ああ、感想書くのに前書き多い…ごめん飛鳥、被ってしまったね(苦笑)紙飛行機飛ばすってやっぱり空のイメージが抜けないもんね。でも飛鳥の方が上手ですわ…。やっぱり最後は呪いかけなくちゃ、携帯に(違!!)それでは、これからも頑張って下さい!!何で皆、上手いのよぉ…。 5 計都 ■2003-06-21 01:11:05 y129009.ppp.dion.ne.jp
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