BLUE・BLACK プロローグ |
BLUE・BLACK プロローグ この世界を、民は『ウェザー・レゲート』と呼ぶ。 そしてウェザー・レゲートには多くの種族が住む。人型である種族は6族。 ウェザー・レゲートの先住民で、この世界を作り出したといわれる全知全能の女神ウェザーから特殊な力を授かったという伝説があるが、今はほとんど絶滅状態で、たった数人しか生き残りがいないという、とても珍しい種族、『スレッド族』。 スレッド族の頭が良かった者の子孫であり、今では世界最高クラスの頭のよさを持つ。 ウェザー・レゲートを支配しているヒト族と手を組めば世界はもっと発展するのに、ヒト族のやり方が気に入らず、嫌っている。『イピシオ族』。 スレッド族の魔力が底なしだった者の子孫であり、彼らはほとんど独立している。今は魔導国『エルジ』という国を作り、住んでいる。瞳の色が濃いほど魔力が強いと伝えられている。エルジア族。 スレッド族の五感がとても発達した者の子孫であり、褐色の肌と尖がった耳を持つ。五感が常人とは比べ物にはならないほど発達していて、ほとんどの者が第六感までを持っている。素早さも弾丸を避けられるほど凄い。谷に住み、不思議な民族衣装を着ている。ゲア族。 スレッド族の武闘の才を持っていた者の子孫であり、武に優れ、そのために自分の身を守るくらいはできるので、ヒト族の次に人口が多い。『自分の身は自分で守れ』、それがフィト族の教えである。 スレッド族の次の先住民でヒト族、力を持たないひ弱な者のくせに欲が激しい。昔はスレッド族とヒト族しかいなかったので、スレッドとヒト族の子が多かった。その子供がスレッドの血を継ぎ、イピシオ、エルジア、ゲア、フィトの4族を生み出した。だから一応4族はスレッドの血を受け継いでいる。スレッドの力を使える者もいた。 しかし他のところが優れすぎて、4族は女神ウェザーの力を奪われてしまった。それがスレッド族絶滅危機の一つ目の理由である。 だが、稀に女神の力を特別に授かったスレッド以外の者もいる。スレッドとは一味違う能力を持っていた。 女神ウェザーの力を授かった者を、皆『ギャンダルズ』と呼んだ。 ウェザー・レゲートには一つの国家的組織がある。 組織名は『BLUE』、総員がなんと1000人。部隊数もバカにならない。 しかし正義を肩に持ち、権力で政府にも文句を言わせず好き勝手やっているのが現状だ。 気に入らない。そう思う組織はたくさんあるのだが、戦力が多い『BLUE』には逆立ちしたってかなわない。 それに対抗しようと、政府が作り出した組織が『BLACK』である。 政府の考えはこうだった。 たとえ1000人の兵士がいようとも、スレッド族がたった一人でもいれば不利の状況は少しでも優勢に変わる。 特殊能力者『ギャンダルズ』もいれば、それは実現する。 二つの組織は、多くの『ギャンダルズ』やスレッド族を集めようと、いつでも争っていた。 争いの最中で、巻き込まれ命を落とすスレッド族もギャンダルズも少なくない。それを恐れた人々は、子供がギャンダルズでもスレッド族でも、秘密にすることが多くなった。 しかし二つの組織の情報網では、隠しきれる確率よりも見つかる確率のが高かった。無事に生きていけるとも限らなかった。 そんな狙われた人たちを助けるために旅をする者たちがいた。 風のように人々を救い、そして風のように去っていく。空を仰ぐような寛大さ、強さを持つと言われた。 それは、争いだらけのウェザー・レゲートに革命を起こす者達でもあった――― 空には、星が散らばるように広がっていた。空を仰ぐように見ている一人の少年は、少しその光景に心を奪われた。 目の前に木を火で燃やし、灯り代わりと彼を暖める役割をしっかりとやっている。 回りには、規則的な寝息が聞こえた。時々布が擦れる音も聞こえた、寝返りをうったのだろう、と分かる。 彼は、今日の野宿の見張りだった。何処でも魔物はつきもの――寝るときには見張りは当たり前だった。 彼は、フィト族のロイド。腰まである金髪を首のあたりで軽くゴムで結い、蒼い眼で星をずっと見ている。 毛布は軽く被っているが、さすがに夜は少し肌寒い。毛布を肩まで包む。 「くしゅっ」 彼の近くで、小さなくしゃみが聞こえた。ふっと目を星空から降ろし、くしゃみをした本人を目で探す。 目で探す時間ははっきり言ってなかった。普通は爆睡している時間帯なのに、起きている人といえば一人だけ。 「寒いのか?アシュア」 ロイドが、くしゃみをした本人の名前を呼ぶ。すると彼女はほっそりとした身体を起こし、こっちに向ける。 肩より少し下まであるさらさらの黒髪で、開いた瞳はグレーだった。イピシオ族のアシュアだ。 寝返りを繰り返していたせいで、少しぼさぼさになった髪を手で簡単に直し、ロイドを見た。 「別に寒くはないです。・・・・私のくしゃみで皆を起こしてませんよね?」 トーンの高い、凛とした彼女の声は、いつもだらけたロイドをなんとなくしゃきっとさせてしまう。 小さなくしゃみだったので皆が起きるはずがないのに、彼女は周りで寝ている人たちを心配していた。きょろきょろと、異変が生じた人がいないか見回している。 起きている人はいないとは分かっていたが、なんとなく一緒に見回してしまった。そしてすぐに視線をアシュアへ戻す。 「誰も起きてないさ。そんな起きてる俺にしか分からないくしゃみなんか誰も気付かないと思うし」 少しあきれ気味の声で言う。 完全に目が覚めているアシュアは、毛布代わりの布を手で退けて、立ち上がる。ちょうど夜の涼しい風が二人の体を少し冷やす。 ロイドたちは、街近くの丘で野宿をしていた。明日の昼には街に着ける、という計算だ。 「アシュア、眠れないのか?」 立ち上がらず、毛布代わりの布にくるまったままロイドが問う。 「はい」 返ってくる返事は、いつもと同じだった。嘘でもこう答えるときもある。 「そう・・か。でも気が済んだらすぐに寝ろよ」 彼はそう言った。こくりと頷いて、そのまま高い丘から星空を見上げる。今にも、手が星に届きそうな気がして、思わず星空に手をかざしてしまった。 それから大分時間が経った頃、ドサッという音が聞こえた。 不思議に思って、振り返って見た光景には思わず苦笑してしまった。寝る前に「俺が見張りをする」と言って、いつも真っ先に寝るロイドが見張りを断固譲らなかったのに、アシュアが起きたことに安心して、眠ってしまった。そんなところだろう、とアシュアは思った。 倒れた場所が、火の近くだったのですぐに駆け寄って、ロイドの体を退けようと持ち上げようと背中と足に自分の手を通した。 同じ年齢だとしても、男と女、体重の差は大きい。それに、アシュアの力はメンバーの中で一番弱い・・と思う。 足に力を入れて、ぐっと持ち上げる。すると、簡単に持ち上がってしまった。まるで、大きめの石を持ち上げようとしたら、その石が発泡スチロール並の軽さだったとかいう感じだ。 抱き上げて、分かったことが一つあった。 ロイドは、自分の体を男らしくというかたくましく見せるために、少し大きめの服を着ていたみたいだった。 実際は、かなり体躯が細い。もしかしたらメンバーの中で一番細いかもしれない。 「すごいです・・なんでこんなに細いんでしょうか・・」 思わずそう呟いてしまった。 起きてしまうかな、と思ってすぐに火に遠ざけた場所に降ろし、起きるか少し様子を見たがまったく起きる気配はない。 毛布代わりの布を、自分の分もプラスして被せてやり、隣に座った。 「明日も、こんな星空が見れるといいですね」 隣で寝ている彼に、彼女はそう言った。 TO BE CONTINUED |
遥
2003年06月16日(月) 18時37分00秒 公開 ■この作品の著作権は遥さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | ||||
---|---|---|---|---|
コメ一番乗り!・・かな?(コラ) あ。・・あけましておめでとう!(遅ぇーっ;;) い、いや; だって言ってなかった・・よね?五ヶ月も過ぎてますが; 久しぶり、遥!オレの事覚えてる・・よね?(ぇ) おー!新しい小説?何個書いてんのさ。(笑) 今回の小説は思いっきりファンタジー系(?)かな?これからがまたおもしろそーな話だョ! ・・・なんか遥の書く主人公とかって愛着が沸くから好きなんだよね。(なんだソレ) あ、遥って今年で中2?オイラやっと中学生だよーv去年は小6だったんですゎ。にょほほ。あれ?言ったっけかな?遥は先輩なのにこんなに馴れ馴れしい口の利き方してもいいのか、と思う今日この頃。(死) 遥のコメントは面白いネ!オイラは好きだよーvコメント読んだらますます次が読みたくなる気持ちになるんだよ!憎いね!この商売上手!(何アンタ) んでは次も楽しみにしていますですゎ。オイラ達会って一年は過ぎてるよね?正月言えなかった分だけ言うよ。これからも末永く(嫌)ヨロシクお願いしますー。んではアディオス! | 5点 | 要 | ■2003-06-17 20:14:37 | catv-100-020.tees.ne.jp |
合計 | 5点 |