<CROSS>外伝〜エデンの東〜 |
「普通の人間がイキナリあんなに戦闘能力が高くなるなんて……ちょっと恐い話よね」 「まぁ、俺らが奴を捕らえようとしている理由もそこにあるからな」 「無駄口を叩く暇があるのなら戦闘に集中しろ」 「了解〜」 ダン!! ダン!! 建物の外壁に飛び移り、更に前と進むリーネ。そしてそれを追う人狩り。 「あと少しで捕獲地点に着きます。総員セットアップの方完了してる?」 「当たり前だろ!自分の心配しとけよ」 「そうね。じゃ、あと5分ほどで到着するわ」 「了解した」 リーネは、進む。 人狩りも、進む。 == 今から7分前のこと。 女の子が1人で泣いていた。 「ねぇ………ナキア、返事して…。お願い、返事してよ……」 「………」 ナキアと呼ばれた少年は答えなかった。 「ナキア……ねぇナキア…」 今でも、あの瞬間を思い出せる。 弟と2人で街に買い物にきていた。 両親は既に自分達とは違う場所に行ってしまった。 買い物、久しぶりに姉弟で楽しく過ごせた時間だった………それで終わればよかったのに…。 あいつが全部壊したんだ。 買い物の帰る途中。とある道でいきなり、大の男が唸り声を上げた。 始めは何だろうと思っていたが、次第に事の重大さに気づいた。 その唸り声を上げていた男が、周りの人たちを次々殺し始めたのだ。 身の危険を感じてすぐに逃げようとしたが、足がすくんで動けなかった。 周りではどんどん人が殺されていく。 そしてついに、あいつは私を見た。そしてあいつが襲ってきて…… 「お姉ちゃん!!あぶないっ!!」 ナキアが私をかばって……… ザクッ!!! 殺された。 真っ赤な血を噴き出すナキア。 その瞳は、沈んだ色をしていた。 ドサッ………。 倒れて、 ゴロッ………。 こちらを向いた。 その顔は、何者も宿していなかった。 ただの死体だった。 「……………!!!!」 また不快感が胸の内側をかきまわした。嗚咽がして、もう何もない胃がせり上がってくる。 気持ち悪い。 「ナ……キア……」 悲しい思いと悔しい思いと少しの嫌悪感で、顔がぐしゃぐしゃになっていた。 周りには、死体しかなかった。 あの時、失神していなければ私も殺されていただろう。 でも、その方が良かった。 また自分が、自分だけが、死ねなかった。 「……………」 今日、買い物で弟が買っていた、ぬいぐるみ。 これを買った時の、あのナキアの笑顔。 そしてその笑顔が、あいつによって一瞬で引き裂かれる。 あの時も 両親が事故で死んだ時も 神様は、助けてくれなかった。 日曜日はちゃんと礼拝にも行っていたのに。 ちゃんと聖書も読んでいたのに。 ちゃんと賛美歌も歌ったのに。 神様は、知らんぷりをしていた。 守ってくれなかった。 今回も、そうだった。 「……………」 女の子は声を上げずに泣いていた。 彼女の胸にある十字架のペンダントが、もうすぐ沈む日光に照らされて光った。 == 「…………」 彼女と化け物が去っても、私はこの場を動かなかった。動けなかった、の方が正しいかもしれない。 ミーシャの死体をなるべく見ないように努力する。見ればまたあの惨劇が一瞬にしてフラッシュバックするから。 「一体こんなトコで何してるの?」 ライムは急に声をかけられて、狼狽した。 声の主はライムのすぐ横に立っていた。 白い長袖の服に、黒の革パン。首からは十字架のネックレスがかけられている。その少年の水色の瞳が真っ直ぐこちらを見ていた。 「………さぁね……」 ライムは答えた。 「こんなトコで座っている場合じゃないでしょう?ほら、立って行きなよ」 少年は落ち着いた声でそう言った。 「何を……………?」 ライムはまた混乱した。訳のわからない状況が続く。 「君はもう戻れないかも知れない。でも戻りたいのなら、引き返したいのなら、先へ進むべきだ」 まるで詩を読むように、その少年は言った。 「…………何故?」 「…おっと、そろそろ時間だ。俺は行くよ。それじゃ」 待ってくれ、と言おうとしてライムはとどまった。 彼がライムをじっと見つめていたから。その水色の瞳には大きな刃と微かな炎が宿っていた。 「俺の名前はカイネ。吟遊詩人。アンタの道を見届ける者」 そう言った次の瞬間、風のようにその少年は消えた。 (なんだというのだ………) ライムはもう半分自暴自棄になっていた。もう頭ではこの状況を理解するのが難しくなってきている。ならば直接肌で感じ取ったことだけを信じればいい。 「先へ進め…………か」 少年はそう言っていた。とりあえず、いけるところまでいってみよう。その先に何があるかは………。 神のみぞ知る、といったところか。 ライムは起き上がり、リーネが捨てていったGアサルトを持ち上げた。 かなり重い。 まぁいい、持っていこう。持てない重さではない。 両腕で抱えて持つようにして、彼女は歩き始めた。 正直、これからどうなろうと知ったことではない。私は私なりのやり方で進んでいく。 ライムは心の隅でそう思いながら、リーネが去っていった道を進んでいった。 == 2人の女が、街中の道をゆっくり歩いていた。 紺色のコートを着ている黒髪の女と、真っ赤なベストにロングスカートをはいている銀色の髪の女。 「いずれなくなる風景か……」 紺色のコートを着ている方の女がぽつりと言った。それに赤いベストを着ている女が答える。 「ええ………ですからわたくし達だけでも覚えておこうと」 「そうだな。それもいいだろう」 そこに、 「…………止まってください」 1人の男が街角から現れて、彼女達の前に立ちはだかった。 「………」 「……阿修羅の方?」 1人は無言のまま、もう1人は静かに男に質問した。 「残念ながら違います。………いや別に残念でもないですね」 男はそう答えた。 黒髪で、白いコートを着ている。コートの下には、おびただしい数のダガー、ナイフ類が収まっていた。 「では何者だ?何故ここにいる?」 先程は黙っていた紺色のコートを着ている女が、聞いた。 「その問いには貴方達が答えるべきだと思います」 そこで、最初に質問した真っ赤なベストを着たほうの女が微笑んだ。 「ふふ………」 「何かおかしい事でも?」 「いえ、あなたもわたくし達と似ているな、と思いまして」 銀色の髪を風になびかせながら、彼女はそう言った。 「……」 「では、そこをどいてください」 「お断りします。運命とはあなた達が決めるものではない」 「では、仕方ないな」 ヒュン…! いきなり、紺色のコートを着た女が動いた。 ザン!! 走りながら、懐よりダガーを取り出す。自然な動きだった。 男もコートの中から一本のナイフを出して、構える。 光が、交差した。 ガキィィン!! 相手の息遣いが伝わってくる。 2人とも、殺気は皆無だった。 殺すつもりは毛頭ないらしい。もしあるのなら今ごろはどちらかの首が宙を待っているはずだ。 男は背中に少し寒いものを感じて、少し早口で言った。 「待ってください。戦うつもりはありませ………」 「その通りです。ラヴェルナさん、ここで斗う事に意味はありません」 白いコートの男の言葉を、真っ赤なベストの女が遮った。 一方、ラヴェルナと呼ばれた女は真っ赤なベストの女を睨みつけた。 「その名では呼ぶなと言ったはずだ、ヴィライズ」 ヴィライズと呼ばれた女も返す。 「しかし、そうでもしなければあなたは止まらなかった、違うのですか?」 「…ふっ…そうだな。…………いいだろう」 しばし考えるような動作をした後、ラヴェルナはダガーを収めた。 それを確認して男もナイフをしまう。 「突然申し訳ありません。ですが、あなた達にひとつ頼みたいことがあってきました」 ヴィライズが聞く。 「何でしょう?」 「時間が無いので簡単に言います。ここは退いて下さい」 男は丁寧に、しかしはっきりとそう言った。 「………何故?」 「彼を死なせたくない。……それだけです」 それを聞いたラヴェルナはいきなり笑い出した。 「それだけのためにわざわざ自らの命を賭けてここまで来たのか」 その言葉に男は少しムッとしたようだ。先程よりもやや棘のある声で聞き返した。 「滑稽ですか?」 「いや…………ここまで愚直だと感心する」 「話がそれていますよ。何故、彼を死なせたくないのですか?」 ヴィライズが少し呆れた様子で言った。 「それはおいおい話します」 が、あくまで男は自分のペースを崩さない。 「私はとあるサーカス団に身を寄せながら、あなた達、『雪華』をずっと追っていました。」 ラヴェルナの眉がピクリと動いた。 「貴様、何故雪華を知っている………!?」 「まぁ追っている組織名くらいは知っておかないと」 「…………」 ガチャ…………! ヴィライズは無言でライフルを構えた。が、男は構わず話し続ける。 「私の知人に雪華の者が1人いました。…………が、彼はそういう組織に入った、と告げてからすぐに音信不通になりました。急にいなくなった事に疑問をもった私は彼を探し続けました。そして……」 「雪華で行われている計画の実験体であった彼の、変わり果てた姿を見た………と。そういう事か?」 ラヴェルナは男の言葉を遮った。しかし、まだ男の話は終わらなかった。 「それだけならまだ良かった。ですが、彼はまるでゴミの様に廃棄処分されました。血液と遺髪を残して。彼は焼却場で焼かれ、他の被害者と共に死にました。メルカディアの司法機関で行われた、ある意味最悪のホロコーストです。もちろんメルカディアの偉い方々は一体何が焼却場で焼かれているのか、まったく知らなかったようですが。おそらくは雪華の人が手をまわしたのでしょう」 「………」 「そして、焼かれる前に採取した彼の遺髪と血液は雪華の元へ。ですが……」 「今回の件で使われた血液サンプルがその知人のものであると。そういう事ですね?」 ヴィライズは感情を押し殺してそう言った。手で持っているライフルは男の頭に向けられている。 「そうですね。今回の被害者にどうやって注入したのかはわかりませんが、少なくともこの事態を引き起こしたのはあなた達以外には考えられません」 「なるほど……。確かにやったのは私達…いや私だ。しかもおそらくお前の予想はあたりだよ」 「……なるほど」 「今回使用した血液サンプル……。名前はシン。彼は失敗作だった。能力の制御が出来ずに自己崩壊。挙句の果てにはその暴走した力で他の実験体を殺しだすという暴挙に出た。………と、これは今までもよくあった失敗作の行動。しかし、一番驚いたのはその感染力。今まで失敗作だったものはほとんどにおいてその能力の感染力が低く、本人を除去するだけで良かったのだが、彼の感染力は我々の予想をはるかに越えていた。ある意味、今までの失敗作の中での究極型だよ」 「…………矛盾していますね。ところで、今までにも『人狩り』は何度か発生しています。それについてはどうなんですか?」 「あれは失敗作を一時的に麻酔で感覚を狂わせ、おとなしくさせる。そしてその失敗作を街中に連れて行って放置する。その後、麻酔が切れてまた暴走するわけだ。当然司法機関が勝手に排除してくれる。死体は我々の息がかかった者が解剖する」 「最大のリスクを避けるという意味では正解ですね」 「一応、な。他にも理由はあるが、あいにくそれに答えている時間はない。…………さて、これでお前が知りたがっていたことには全部答えた」 「そうですね……。ですが、やはりここを通すわけにはいきません」 チャキ……。 それを聞いたラヴェルナは、ダガーを懐から取り出した。ヴィライズと一瞬、目配せをする。そして、男に向かって死刑宣告のように淡々と言った。 「どうあってもか」 男は答えた。 「………ええ」 == 「リーネ、今どこらへんにいる?」 不意に通信が届いた。リーネは建物の外壁を駆けながら答える。 「捕獲地点まで20秒くらいで着く場所」 「そちらに1人、作戦に遅刻してきた上に、いきなりお前の支援に向かった馬鹿がいる。そいつの回収も頼む」 「隊長、それって………」 「返事は?」 「りょ、了解!」 (たく、ジェイの奴……) リーネは心の中で舌打ちをした。 こんな無茶をやるのはあいつしかいない。 リーネは90度ターンして、地面に向かって走り出した。 ッッッッッダン!!! 着地して、自分が来た道をじっと睨みつける。 人狩りは猛スピードでこちらに向かってきていた。 「また同じ事言うようだけど………来なさい、化け物ッ!!」 リーネの持っている銃が轟音をたてた。 ドォン…!! チッ…ヒュン! 人狩りは一瞬の判断で飛んできた銃弾を回避する。 咆哮。 「ああああああああああああああ!!!!」 == 1人の少年が、白い空間を歩いていた。 微かな水音。 冷たい感覚。 左右は白い壁。何もなく、ただ漠然と伸びている。 ……………。 歩いても、まったく音がしない。どうも妙だ。 だが、なんとなく懐かしい感じがする。 しばらく歩いて、少年は1人の少女に出会った。 少年が聞く。 『………君は誰?』 少女が答える。 『………我はサタン』 『サタン?』 『……神の僕。天使とも言う』 『天使……。サタンが?』 『そう。サタンとは、人間の都合で魔王とされた天使。神の試練を人々に与える。それが我の役目』 『何故……?』 『単なる人間の都合に過ぎない。神に従順なものは、人から迫害を受けるものだ』 『………』 『ここにいつまでも留まる意味はない。……帰った方が良い』 『……もう自分には帰れる所がない』 『……………』 『進む道を誤ってしまった。償いきれない罪を負った。もう生きていくのも嫌になった。こんな人間が、どこに帰れるというのだ?』 『……汝には意思がある。思いがある。足りる事を知っている』 『それだけでは何の意味も持たない』 『…では我が意味を与えよう。力を持つという試練をその身に課す』 『な……?』 『聖なるは天の玉座。空に鳴き、哀れな無知なる者共を裁く、力の象徴。我、汝に問う。炎を断ち切り、自らを深淵へと導く闇を受け取るや否や?』 『…………』 『業をその身に負う意思があるか?』 『…………わからない。……だがもし自分に選べる道があるとしたら、どんなに素晴らしいことなのだろうな……』 『自由というのは誰もが持っていそうで持ちきれていないものだ』 『そうだな……。いいだろう。業を負おう』 『ならば……これが闇だ。受け取れ』 急に、空間に光が満ちた。 ガチィィィン!!! 金属が空を切り裂く音が聞こえた。 シュゥゥウウウ………。 光が少年の手に収束する。眩しい。 キイイイイィィィィン!!! 耳障りな音が聞こえた後、彼の手には一本の刀が存在していた。 少年は聞いた。 『これの名前は?』 『……聖天鳴空。この名は自らの内に秘めておけ。』 『…わかった』 『…………では、帰るがいい。自らがあるべき場所へ』 帰る……………………どこへ? 少年がそう思った瞬間。 ドグン……。 いきなり真っ暗な空間へ放り出された。 狭い。 四肢を曲げても、空間的に小さすぎる。 ごぅうん。 水の中のようだ。生物的な音が妙な反響をつけて聞こえる。 狭い。 苦しい。 息が出来ない。声を出せない。 目が開けられない。 縮こまることしかできない。 ここは、どこだ……? == 「あああああああああああ!!!!」 人狩りがリーネに飛び掛る。 ザン!! 左に転がり込んで人狩りの攻撃を避けると、リーネはすぐ後ろに飛んだ。 ガッ!! 間一髪。 先程までリーネの頭があった場所には、人狩りの拳が叩きつけられていた。 「あぶないわねー。もっと手加減してよ…………!!」 リーネの表情にも、余裕がなくなってきている。 さっきから、人狩りの動きが格段に良くなってきている。 どんどん学習しているということだ。このままではいつか殺される。 (冗談じゃないっつーの!!) リーネは舌打ちした。まだあの馬鹿は来ないのか。 と、そう思った瞬間。 「またせたな、リーネ!!」 バガン!! 聞き覚えがある声と同時に、近くのマンホールの蓋が開いた。 「よいしょ……と。ああ疲れた。バズーカ持ちながら登るのって案外辛いな〜。次からは気をつけようっと」 やれやれといった感じで地下道から出てきたのは、リーネの恋人兼同じ隊員のジェイだった。 リーネはその様子を呆れてこう言った。 「なんでこんな所から出てくるのよ………」 ジェイは、思わぬところから出てきて人を驚かせるという困った趣味がある。しかし、今この状況でソレを実行するとは………。 「まぁいいだろ?今回はお前驚いたから俺の勝ち。さて、さっさと仕事終わらせようぜ!」 そう言うとジェイは気合充分、とバズーカを構えた。 「……馬鹿」 重要な作戦に遅刻してきて、しかも独断専行を平気で敢行。 でも、リーネはジェイのそんな所が好きだった。馬鹿だけど頼りになる。それに嘘をつくとすぐにわかってしまう。 「ああああああああ!!」 人狩りは待ってくれなさそうだ。銃の残弾数を確認すると、リーネはさっと移動した。 「どうするの?」 「決まってるだろ?ここで奴を捕らえる!!」 と、ジェイのバズーカが大きく後ろに反れた。 バガンッ! バズーカの砲弾は人狩りのはるか後方に着弾。 爆発。 ドゴオォォン! 爆風にあおられて、人狩りは少しよろけた。 リーネがその隙に一気に人狩りに近づく。 懐に収めてあったコンバットナイフを取り出し、人狩りに突きたてた。 「でやぁっ!!」 ザクッ!! 確かな手応え。やった! 「がっあああああああああああ!!」 肩にナイフを突きたてられた人狩りは吼えた。そして、 「!!!! リーネ、危ない!!」 ジェイの声が聞こえた。 「え?」 ザシュッ!! 人狩りの手は、リーネの手を斬った。 ナイフを握っていた左手が、宙を飛ぶ。 「あぐっ!!!」 血が、腕から吹き出た。 「あああああああ!!!」 人狩りは更に攻撃を加えようとする。だが、 「野郎、ふざけんな!!!」 ジェイがバズーカで応戦した。 「リーネ、撤退しろ!奴は俺が捕まえる!!」 「くぅ……」 リーネは激痛を堪えていた。血がボタボタと地面に垂れ流される。 なおもバズーカで応戦しようとするジェイに、人狩りは接近戦を挑んだ。零距離まで近づき、死角に入ろうとする。 が、ジェイはそれを許さない。バズーカの砲身を振り回し、牽制する。 「チッ!!!」 ゴゥン!……ジャッ! バズーカを捨て、ジェイもナイフを抜いた。 人狩りは構わずに特攻してきた。 「あああああああ!!」 「百年早い!!」 軽く人狩りの攻撃を避けきると、その無防備な背中に向かってジェイは刃をつきたてようとした。 しかし、横にステップを踏んで人狩りはその追撃を難なくかわす。 「くそっ!!」 ザン!! ジェイは踏み込んでナイフを一閃させる。しかし人狩りは後ろに跳躍してこれをかわす。 さっきから的確な攻撃を行っているはずなのに、一向に当たらない。 何故だ………? 疑問は焦りを呼び、焦りは判断力を鈍らせる。 「あああああああ!!!」 人狩りはどんどん速くなっている。学習能力がとてつもなく高い。 どうする? 「コイツ……!!」 後ろからの奇襲、隙をわざと作って誘う、他。どんどんこちらの行動を記憶し、そして実行。とんでもない学習の速さだ。 と、人狩りがいきなり旋回してこちらを向いた。 「なっ……!!」 そして凄まじい速さでこちらに向かってくる。 自分は止まれない。横にステップを踏んでいるため、移動方向が限定される。その方向を読んでの、人狩りの攻撃。 避けきれない。 (殺られる!?) 死を覚悟した瞬間、反対方向から強い衝撃があった。 「ぐっ!!!」 予想外の衝撃に、ジェイはなさけなく吹っ飛んだ。 ガッ!! 地面に叩きつけられて一瞬、気を失う。 ザクッ!!! 「うっ!……あ…」 直後に何かが刺さる音と弱々しい声が、ジェイの耳に届いた。 人狩りの手は真っ直ぐ伸びていた。そして、その途中には……。 「な……?」 リーネの体が、突き刺さっていた。胸に血が染まっている。 ジェイの耳にリーネの弱々しい声が届いた。 「ジェイ…………ごめん………」 それが、最後だった。 ズバッッ!! 人狩りが手を引き抜いた。それと同時に、リーネからは大量の鮮血が噴き出していた。 ブシュウウウウゥゥ……… リーネの体から、血飛沫が飛ぶ。 ガックリと膝をつき、リーネは地面に倒れた。 ドサッ………。 倒れたリーネの瞳は虚ろだった。 「ウソだろ!?リーネェッッッ!!!!」 ジェイは、叫んだ。 リーネ・ウィンハザード准尉、18歳。 某日、昼。特殊任務中に殉職。 死亡、確認。 例え親しい者であっても、別れは突然やってくる。 そう、突然に………。 続く。 |
ZNK
2002年11月22日(金) 23時19分12秒 公開 ■この作品の著作権はZNKさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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すごいすごい!!今回もカッコいいです〜!!(><)この戦闘シーンは上手すぎです♪しかも、私のキャラさんがいっぱい出てる♪感謝です〜!!あ、でもリーネさんの死はショックでした・・・。ああ、次も楽しみ・・・・物凄く!!次も頑張ってくださいね! | 5点 | 桃助 | ■2002-11-25 19:22:56 | u113226.ppp.dion.ne.jp |
こんにちわ〜青空、八割復活!!(謎)なんていうか、読み応えがありました、結構予想外の意外な展開で驚いてます!この間までほぼ主人公化していたリーネが死ぬとは・・・こうなると続きが気になります次回もがんばってください!! | 5点 | 青空 | ■2002-11-25 14:02:41 | h219-110-037-097.catv01.itscom.jp |
遅レスだね、ごめん。しかし…あぁ、リーネちゃんが…。ぐぬぅ……なかなか色々な面が見れた気がするわ。次回も頑張って!! | 5点 | 水希華蓮 | ■2002-11-25 09:50:12 | taiheiyo.taiheiyo.ed.jp |
お久し振りです〜。久し振りにPC起動させてまとめ読みして参りました。ぬぅ…。最初っから通して読んで参りましたがなんてゆーか、スゴイとしか言えません。ホント。言葉知らずで恥ずかしい…。ともあれ毎回毎回、次回が気になって仕方ありません! | 5点 | みづき | ■2002-11-23 20:10:21 | usr021.p01ato.sa1.im.wakwak.ne.jp |
ちょっと気合を入れて読まないと、ストーリーについていけないほどスゴイ(いろんな意味で)。 ええ、最後、死んじゃうんですか?! これからどーなるんでしょう★ | 5点 | ユタマチ | ■2002-11-23 14:40:32 | i241048.ap.plala.or.jp |
は〜い。いっちばんレス〜(たぶん) もおすごい、尊敬します。戦闘シーンとか、かなり素晴らしいです。 私的には言うことなしジェイさんも活躍してるし、フレスさんも出たし。 あと、フレスさんの弟の名前ですね、もう勝手に決めてしまってよかったんですよ〜。気にするべからず♪それじゃ、このへんで♪ | 5点 | テルル | ■2002-11-23 11:19:36 | yahoobb230082028.bbtec.net |
合計 | 30点 |