死神のロウソク
          死神のロウソク 第一話:願い。

   ある小さな町の小さな駅に1日に3回程しかこない列車から1人の男が降りて
  来た。黒いコートに黒いズボン、全身黒ずくめに、長身の少しやせた身体に
  色白の顔には血のような暗い赤の瞳のまるで「死神」のような男だった。
   男がやってきたこの小さな街は「ヌーバ」という街で、少し前までは活気
  に満ち溢れていたのだが、数ヶ月前から始まった「紛争」で、街は死んだよ   うに静まり返っていた。 一つ忙しそうなのは街に一つしかない病院だけ。
  紛争で負傷した兵士達が次々と休むまもなく運び込まれていた。
  男もその病院の前までくるとポケットから一つのメモを取り出して何かを確認
  すると病院の中へ入っていった。病院の中では慌しく看護婦や医者が走りま   わっていた。 男は黙って病院の奥へと進み、扉に6という数字が書かれた
  病室に入っていった。 せまい病室の中には見るからに重傷の男がベッドに横
  たわっていた。 全身のほとんどにガーゼが張られ,その上から包帯が巻かれ
  体中、顔も、アザや切り傷だらけだった。 かろうじて意識はあるらしく、
  時々傷が痛むのか「う・・・うぅ・・・・。」と弱々しい声を出していた。
  男はしばらくベッドの上の重傷の男を黙って見ていた。  
  すると、ベッドの上の男がかすれた聞き取りにくい声で自分をずっと見ている
  男に向かって話し掛けてきた。 重傷の彼には精一杯の声だった。
  
  重傷の男「・・だれだ・・?あ・・んた・・・」

  黙って見ていた男「・・・・・刻賭(こくと)。・・・・・・死神だ・・。」
  
  なんとずっと重傷の男を見ていた男は刻賭と名乗り、自らを死神と言ったのだ
  次は刻賭のほうから問い掛けた。
  
  刻賭(こくと)「・・名は?」

  重傷の男「・・・・蓮(れん)。」
  
  刻賭(こくと)「俺は死神だ。冗談なんかじゃねェからな。テメぇの命を刈りに  来た。要するに、お前は今日死ぬってことだ。 コレは運命だ。もう何年も前  から決まってることなんだ。ま、俺がその気になりゃ助けてやることもできる  けどな。」  そこまで言った時、蓮と名乗った重傷の男が口を開いた。

  蓮(れん)「そうかぁ・・俺死ぬのか。それなら楽になれる・・。もう苦しむ必       要も無くなる・・・・・ただ・・。」
  
  刻賭「ただ?」  蓮「ただ・・会いたいんだ。か・・ぞく・・に。
             軍に入ってからもう3年・・1度も会ってない。」
  刻賭「んでその家族に会いたいと?オイオイ・・命乞いならまだしも・・・・
     家族に会わせてくれってぇのは・・なぁ・・いくら死神でも無理だ。」
  
  蓮「は・はは・・そ・・だな。第一・・家族が・・・生きてるかどうかも・・    わか・・ん・・ない・・・しな。・・じぶ・・んの子供の顔も見たことが
    ない・・んだ。・・子供が・・まだ妻のお腹にいるときに・・・離れちまっ
    たから・な・・。・・父親なのに・・情けない。」
  刻賭「・・へぇ・・そうか・・。確かに情けない。じゃ・もう喋るのは終わり
     か・・?」
  そういうと刻賭はコートのしたから一つの折りたたんであった大きな鎌を取り
  出し、蓮の首にあてた。 刻賭「・・いくぞ。」
  だが少し刻賭には迷いがあった。、争いによって家族と引き離され、最後の願
  いもかなえてやれずにこのままあの世に送って良いのかと。
  ガランと音を立てて大きな鎌が刻賭の手から落ちた。
  
  刻賭「んのやろぉ・・助けてやろうじゃねぇかよ・・・このっま終わるっての
     はどうも気にくわねぇからな。」
  そういうと刻賭は蓮の胸に手を当てた。 
 
  刻賭「・・命火灯・・」そうつぶやくと刻賭の手が熱くなり、オレンジ色の美
     しい炎が生み出された。暖かい。癒しの炎だった。

  刻賭「ひとまずテメェは助かった。後は好きにするんだな。さてと・・問題は
     俺だな・」
  蓮はキョトンとした顔で刻賭を見つめていた。不思議なことに、身体の痛みが
  すべて消え去ったのだ。
  
  だが、問題は刻賭だった。死神は神の出した命令どおり魂を刈り、冥界へ送ら  なければいけない。 それにそむいた死神は、同じ死神によって、
・・・・・・・・・・・・・・消される。・・・・・・・・・・・
スイッチヒッター
2002年11月21日(木) 22時47分45秒 公開
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■作者からのメッセージ
初投稿です・・。
ぐへぇ〜・・長い・・。

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