DISSOCIATED PERSONALITY |
『運命って、一体どれほどの者がかかわっているのだろう……?』 ――嫌な、予感がする―― そう、シューザが言ったのはあまりにも唐突すぎた。 私が今いる場所は、商店街の真ん中。 夕方になり、もうそこは活気を失いつつある。 子供達も遊び疲れたようで、家路へ急いでいるようだった。 「何が?」 ――俺の直感がそう言っている―― 「直感、か……」 当たらないでほしい。それが、よく当たるシューザの直感だとしても。 そして、私は聞いてしまったのだ。 「行け!!探すのだ!手段を選ばずにな!」 私は目を疑った。 目の前に、見たことのない鎧を着込んだ兵士を見つけたのだった。 その数、ざっと100人以上…… 冷たい目が、私を睨んだ。 「逃げろ、スファラちゃん!」 誰かの言葉で、私は我にかえった。 そのまま、走り、私は小さな路地に駆け込んだ。 息があがってる。心臓が、音を立てている。 ――おい、大丈夫か?―― 「うん、平気……」 ――代われ―― それは、怒りに満ちた言葉……思考だった。 私は素直に従い、ローブを脱いだ。 ローブの下は旅人の服で、腰の双剣が揺れる。 私は髪を結び上げ、目を瞑った。 ――さあ、教会に向かうからな―― =※=※= 俺は走った。ただ教会を目指して。 「おい、何者だ?」 目の前に、あの兵士が立ちふさがった。 俺は、ここらでひと暴れしてやろうと思った。 が、その感情は怒りへと変わる。 「お前ら……!?」 兵士は3人。こちらを見たその厳しい姿の後ろに俺は見てしまった。 怯える、親子の姿。 母親に抱かれた子供。そして、母親の方は、体に痣が見えていた。 「何をした……?」 「ん〜?なんだぁ、こいつ」 「その人に、一体何をした!?」 気がつくと、俺は剣を引き抜いていた。 「くる気か小僧!?」 「だあぁああ!!!」 1人目の肩に剣が突き刺さる。そいつやよろめいたところで腹を蹴り上げた。 「逃げろ!」 俺は2人目に回し蹴りをくらわせて叫んだ。 「早く、何処かの家へ!!」 母親の方が子供をかけて走り去った。 俺は3人目を斬りつけて脅した。 「一体……何をした!?」 「きっ、聞き出しただけだ」 震える声で、男は言った。 「『アレ』が、どこにあるか……」 「『アレ』だと……?」 殺気。兵士の顔がにやりと笑った。 後ろから最初に切りつけた兵士が襲いかかってきたのだ。 俺は強引に体をねじってそれを避けた。 「こんのぉ……」 剣が、閃く―― 最後の兵士の追ってから逃げて、俺はほっとした。 あの3人はこてんぱんにしたのは良いものの、今度は別な兵士が来て逃げてきたわけだ。 その数、一気に30人。 「んで、どうするよ……」 と、知らず知らずのうちにため息がこぼれていた。 「しっかし……『アレ』って、何だ?」 俺はスファラに問い掛けた。暫くの間。 ――分からない。でも、もしかしたら―― 「もしかしたら?」 ――……ううん、なんでもないの。でも、教会に急いで―― 「はいはい……スファラは隠し事が下手だな」 俺はにやりと笑った。 兵士はかなりの数で、この村を捜索していた。 1つの角を曲がれば、絶対一人とは出会ってしまう。 その度、俺の双剣は少なからず血を浴びた。 「あー……どっちだ?」 俺は兵士の少ない道を選んでいた。 それでも会ってしまうのだからしかたない。 「くそっ、はずれだったか!」 そして、兵士が多く配置されている道を選んでしまう俺。情けない。 「おりゃぁあ!!」 剣が、鈍い金属音を発てて弾き返る。 その鈍った動きに、蹴りを一発放ってやる。 「殺されたくなかったらどきやがれ!!」 俺はその場を駆け抜けた。 驚愕。そんな言葉が、はっきりと脳裏に焼きついた。 教会が、燃えていた。 俺と、スファラの育った教会が…… 「くっ……くっそぉ……」 頭の中は真っ白だった。ただ、怒りが込み上げてくるだけ。 「どうして……何でっ!」 「おい、誰かいるぞ!」 「どっちだ!?」 兵士が俺の叫びを聞きつけてやってきた。 俺は、何も考えず、剣を構えていた。 「どうして!!どうしてこんな村がこんなことに!!」 剣は襲い掛かってきた兵士の剣をはじき、鎧を貫いて相手の腹を斬った。 「こ、こやつ!」 「うっせぇ!!」 無我夢中だった。怒りに剣が動いていた。 ――シューザ!―― 「スファラ、止めんな!!」 俺を静止させようと兵士が次々に襲ってくる。 「邪魔すんじゃねぇ!!」 ――止めて、落ち着いて!―― 「黙ってろ、スファラ!!」 俺の走りは止まらなかった。 何人もの兵士を蹴散らし、俺は教会の前に駆け込んだ。 炎は手加減を知らない。 赤々と燃えるそれは地獄と呼べるような熱をもっていた。 俺の金髪が、その赤い光に照らされていた。 「……!?」 半開きになった扉から、中の様子が見えた。 兵士がいる。しかし、何かをくいいるように見ていた。 彼らが見ていたのは、長髪の剣士――いや、聖騎士。 しかし、そんな問題は関係なかった。 その騎士の後ろに、サザンヌ老師がいたのだ。 「老師……!」 俺の体は、かっと熱くなった。 何も、考えずに俺は叫んだ。 「老師に触るなァァァ!!」 とたん、俺は扉をぶち破るように中に入った。 入った瞬間、俺は目の前の兵士を切り倒した。 「うわぁぁぁぁぁ!」 金属同士のぶつかる音。俺はその聖騎士に切りかかっていた。 その後、俺は怒りの形相で間合いを取った。 聖騎士は慌てた様子で言ってきた。 「待て!俺は敵じゃない!」 「信用なんて出来るか!」 正直、俺は敵か味方かなんて考えてはいなかった。 ただ、この教会、老師を助けなければという思いでいっぱいだった。 しかし、なぜか攻撃は相手に当たらない。 もしかして、この聖騎士……相当の腕か? 「はっ!」 剣の重い攻撃を受けて、俺は吹っ飛んだ。 やっぱり、こいつ、強い!! その時、兵士の叫ぶ声が聞こえた。 俺の体も、自然とそちらを向く。 兵士が撤退していく、その足音の中に、微かな音がした。と、次の瞬間 どすんっという鈍い音が、俺の後ろで弾けた。 ――!! シューザ!!―― スファラが叫んだ。もちろん、意識の中で。 「なっ……!」 俺は振り返った。 大きな柱が、老師の上に倒れていた。 そのとたん、俺の意識は何かに引きずられるように途絶えた。 =†=†= 「老師!」 私は驚きのあまり、そう叫んでいた。 しかし、ここで自分自身に驚くことになる。 何故なら、私はシューザを強制的に押しのけたのだから。 今まで、こんなことはなかった。が、そんなことはどうでもいい。 「老師……!」 私は柱の下敷きになっている老師に飛びついた。 涙が、溢れてきた。 「どうして……」 そう涙ながらに呟く。その時だった。 「退いていろ」 深い声。私は反射的に振り返った。 長髪の、男の人が立っていた。シューザと闘った、聖騎士。 「退けと言っている」 「はっ、はい」 その聖騎士が言った言葉は、どこか震えていた。 私の聞き間違えかもしれないが。 老師を抱きかかえ、私は泣いていた。 「泣くんじゃない、スファラ」 「そんなこと、無理です……」 老師の声は、何の震えもなかった。 ただ、その優しい目で、私を見つめつづけている。 「……まだ、話していないことがいくつかあったね……」 「そんなっ……、最後みたいに、言わないでください!」 「最期なんだよ、スファラ。いいかい、よく聞くんだ」 老師は、いつもの口調で話し始めた。 「お前の運命って物はね、お前だけの物じゃないんだよ。いくつも折り重なった、世界の運命の中に、スファラの名前が刻み込まれている お前は強い光を持っているんだ。何者にも負けない、全てを癒す力を。 世界は生まれ変わる。運命は一度姿を消す。その時……お前は光になるんだ。 今は分からなくても、きっと分かる。 お前は……私の可愛い娘だから……」 老師は、私に微笑みかけた。それが、たまらなく悲しい。 「サザンヌ老師……どうして、逃げなかったんですか?逃げることが出来たのに……これからも、一緒にいることが出来たのに……」 涙が、止まらなかった……。 そして、帰ってきた答えは、なぜか、私を納得させてしまった。 「わしは……ここを守る義務があった……。ここの力を引き継ぐ者が必要だった……」 そう言って、老師はあの聖騎士のほうを向いた。 「来てくれた……その日に気づかれるとは思わなかった……」 「なぜ……俺なんだ?」 そこから先は、私はよく聞いていなかった。 シューザが、私に話し掛けていたから。 ――おい、何が一体どうなってるんだよ?―― 私にも、正直分からない。 ――あいつ、一体何もんだ?どうして老師と……―― シューザ、私にも分からない。ただ、分かっているのは…… ――老師が……いなくなってしまう……―― 不意に、老師が、にこやかに笑った。 「……老師?」 「さようなら、スファラ……」 そして、私の腕から、ぱっと抜けてしまった。 「!! 老師っ」 「女神よ……この今を生きる者たちに幸運を……!」 光が、視界を覆い尽くした。 女神像が、この大きな光を放っている。 「老師っ……!」 私は、その光の中、老師へと抱きついた。 しかし、掴めなかった。触れることさえ、出来なかった。 ――老師っ!?―― それが、別れだと、私は悟った……。 その光の霧が、突然、色を変えた。 何かが、光の中から現れたのだった。 黒と白の2つの色で分けられた仮面。 黒いマントの中にははるかな虚空が見える。 羽が見えた。深紅の、天使の羽。 その姿に、私は驚愕した。 何も考えられず、頭の中は、視界と同じように真っ白だった。 「なっ、何……?」 私は後退した。そして、背中が何かにぶつかった。 思わず後ろを振り向くと、そこにあったものは、光を放つ、女神像……。 「老師……、やっぱり……」 その時。光の中で、私は声を聞いた。 シューザではない。老師でもない。あの聖騎士でもなければ、周りの兵士達でもない。 美しく、鈴の鳴るような声だった。 『スファラ、生きなさい』 ……誰? 『生きて、光をもたらしなさい。生きて、あの人――シグマの力におなりなさい』 誰なの……? 瞬間、私は知らず知らずのうちに、女神の像へと抱きついていた。 理由は……自分でも分からない。 風が、私の髪を撫でた。その感覚に、私は覚醒した。 私は、草原の中、女神像の下に立っていた。傍らには、横たわった老師がいる。 しかし、教会はなかった。街も、もとからなかったように消えていた。 私は、記憶の断片を探った。そして、見えたのはあまりにも酷いものだった。 光より飛び出した召喚獣が、聖騎士――シグマさんの側で、村を消した。 覚えているのは、それだけだ。 私たちのほかに、彼はいた。 聖騎士……シグマ。 草原に、寝そべっている彼に、私は恐る恐る近づいた。 「シグマ……さん?」 どうやら、聖騎士は、気を失っているようだった。 「シグマさん……シグマさん!」 声を張り上げると、彼は目が覚めたようだった。 起き上がって、きょろきょろと周りを見回し、私と同じように驚いた。 「俺が……やったのか?」 私は、答えなかった。 悲しい。寂しい。でも、分かったことが1つある。 それは…… 「……正気じゃなかったんですよね?」 シグマさんが、驚いたようにこちらを見た。 「暴走してしまったんですよね……自分がコントロールできなくて」 私は、自分に言い聞かせた。生まれた仮説を立証するように。 「だって……老師が力を与えた人が……そんな人のはずが……」 ――スファラ……あの変な召喚獣のこと、知ってたのか?―― シューザだ。その言葉に、私は頷いた。 「そうだ。そんなはずはない」 聖騎士は、言った。しかし、その言葉はどこか揺らぎがあった。 それでも私は、安心して頷いた。 でも、不安がある。村がなくなってしまった以上、私は…… 「……これからどうしよう?」 行くところはない。どうすればいいのだろうか。 すると、 「……俺が守ってやる。俺が、旅のパートナーになってやるよ」 私は、驚いた。 この人が……私と一緒にいてくれる……? 答える前に、シューザが口をはさんだ。 ――おい!まさか、ついて行くって言うんじゃないだろうな!?―― 「うん。そのつもり」 ――こんな危ない奴と、旅するのか!?パートナーだったら俺がいるだろ!?―― 「そうだね……」 ――……俺じゃ不安なのか?―― 「ううん、そんなんじゃないの……。今は、この優しさに甘えさせて……?」 ――……けっ、分かったよ―― 私は、笑った。 「……というわけで……お願いします」 真っ赤になった顔を隠して、私はお辞儀した。 聖騎士シグマ…… 彼の名前は、世界の運命の大部分に刻み込まれているのだろうか? そして私は、彼のなんだというのか……。 |
桃助
2002年11月11日(月) 20時20分47秒 公開 ■この作品の著作権は桃助さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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すごい合作。話しがかみ合ってる。やりますね〜今回の作品。とても風景や行動の描写がよくできていて文章がわかりやすよかったです。ただ一つ言わしてもらいますと合作という条件で言わしてもらいますが、もう少し心情のほうにも力をいれて欲しいと思いました。もちろんサザンヌ老師の死の間際の心情もいいのですがもうすこし痛いくらいの悲しみを書いて欲しかった...でもよい作品でした!次回もがんばってください! | 3点 | アストラナガン | ■2002-12-01 22:52:31 | dialup-82.7.194.203.acc03-kent-syd.comindico.com.au |
なるほど、あそこで一人ぎゃあぎゃあやってた彼女の行動の意味がやっとわかった!(遅ッ)二つの視点から進むっていうのすっごく新しい感じで良いな♪これからも頑張って!グッビバイ! | 5点 | まぎ | ■2002-11-24 20:49:54 | proxy1.uyasu1.kn.home.ne.jp |
合作、格好いいですね!!自分もいつかは合作をやってみたいですね〜。羨ましい限りです。今回シューザがどんどん兵士を倒していってすっごく格好よかったです。ではでは、次回も頑張ってください!! | 5点 | ZNK | ■2002-11-12 23:24:54 | i078199.ap.plala.or.jp |
めっちゃおもしろい! 二重人格(?)という設定がいいね。 コンダクターの方にもいずれレスします | 5点 | 侍忍者 | ■2002-11-11 21:04:12 | zaqd37895c8.zaq.ne.jp |
合計 | 18点 |