DISSOCIATED PERSONALITY

礼拝をしているとまたあのシーンが頭をよぎる。
そのたびに首を振る自分が嫌になってきた。
「・・・くそっ。」
俺はそうつぶやき前を見る
目の前にはたくさんの人が祈りをささげている
「全ての人に光を・・・。」
サザンヌ老師がそう唱えると皆が黙祷する。
俺も皆と同じく黙祷する

神・・・この世界を創造し、統治しているという神・・・。
彼女に祈れば本当に救われるのか?
彼女は・・・本当に存在するのか?
最近はそれさえも疑ってしまう。
「聖騎士失格だな・・・。」
俺は礼拝を終えるとさっさと席を立った。

「大将。あの子のことは残念でしたね。」
少し気を使ってるようなにきび面の顔が俺をのぞきこんできた。
奴の名はプライム。
奴は俺専門の情報屋で政府から全旅人への依頼を俺に伝えてくれる。
それによって成功したら国から補助金がもらえ・・・俺たちは生活できる。
その金を一割だけもらって情報屋も生活している(実際多数の者に情報をやることが出来る情報屋の方が儲かるという話もあるが。)
「・・・次の依頼は何か入っているか?」
そう俺が言うとそら来たとばかりにそいつが書類を取り出す。
「次の依頼はですね・・・南西面の要塞攻めの手伝いだそうで・・・。」
「戦争でも始めるのか?」
「そんな感じですかね・・・。」
プライムはしきりに俺の心配をしているようだ。
奴のことだろう。心配されるとよほどにあのことが思い出されて困る。
「いっそのこと・・・アイツのことを忘れて新しいパートナーでも作ればどうで・・・」
「くだらん。俺は帰る。」
嫌な話に入ったので俺は宿に戻ることにした。
「あ・・・作戦のほうは・・・?」
「明日説明しろ。今日はいい。」
俺はさっさと門のところを出て行った
「おい、あいつの分の金は払えよ。」
その後ろでマスターがプライムを脅すかのように言う声が聞こえた。

「・・・俺もどじだな。」
ルビーを落としてきたようだ。
恐らく教会だと思った。あそこで一度出したのを覚えている。
そのルビーは親友が昔つけていたもので、義兄弟の印として半分にしたものだ。
「さっさととってくるか・・・。」

夕方になって、空が真っ赤に染まっていた。
向こうの方で、畑をいじってる農夫達が見える。
左のほうには商店街がそろそろ活気を失ってきた頃だ。
前には教会がこの村のシンボルであるかのようにそびえ立っているように思えた。

「失礼。」
俺は教会の中に入る。
改めて見てみると四方を埋め尽くしたステンドグラス
きらびやかでありそれであって素朴なろうそく達
そして前方に静かに凛として立っているのは女神像だ。
老師はその女神像の前にいた。

「これを取りに来たのでしょう?」
彼は手の中からルビーを取り出すと俺の手の中に渡した
「すまないな・・・おかげで助かった。」
俺が老師の顔をみてなんとなくいつもと違う感じがした。
いつもより厳しい・・・運命に逆らっているかのような顔つきだった。
「いや・・・これも神の御心・・・これから起こる事も、これまでに起こった事も・・・」
老師は一言一言に力を込めて言った。
「ですが・・・神も人の強い意志にはまだかなわないようです・・・。自らの運命は、自らで切り開きなさい。」
そういうと老師は呪文を唱え始めた。
「では・・・。」
俺は老師の言っていることも、呪文の意味も全くわからなかった。
だが、老師の力強い言葉が耳に響いた。

「おい!何か来たぞ!」
「くそ!こんなに早く来るなんて・・・」
「早く逃げるぞ!」
俺はそれを見て驚きを隠せなかった。
こんな小さな村に・・・百数十人の兵士がやって来ていたのだ。
「・・・南の兵か?」

この世界はたくさんの国に分かれている。
この村が属しているのは西の商業国家。
あの兵は南の軍事国家のものだがそれにしてもおかしい。こんな村に100名以上出す必要はないはずだ。
何か秘密があるのか・・?

そう感じた瞬間やつらがこちらに突っ込んできた。
「く・・・!」
俺は剣を抜く
「止まれ!こんな村に攻め込む必要はないはずだ!」
奴らは無視して突っ込んでくる
「ち・・・やるしかないか。」





何分かかっただろうか。
俺は一人で何十人を倒し、教会の中に避難した。
中にいるものの安全を確かめなければならないと思ったのだ。
教会の中にはたった一人、老人が残っていた。

「・・・サザンヌ老師か。早く逃げた方がいい。ここは危険だ。」
そういうとサザンヌ老師はただ首を振った。
「俺が村の外まで連れてってやるよ。安心しろ。」
わずかに周りに警戒しながら言った。
それでも老師は首を振った。
「私はここを守る・・・。早くココを離れなさい」
「何を言ってるんだ!早く行こう!」
すこしムキになって俺は言った。
またあのシーンが頭によぎってくる
「悩まれるな・・・。彼女は常に貴方と共にある。」
「え・・・?」
そう老師がいった瞬間裏口から兵士達が突入してきた。
「ちぃ!」
俺が剣を振り上げると風が剣をまとい、真空の刃を生み出す
「ここにあるはずだ!探せ!」
隊長らしき男の声がする。
ここに・・・?
やはりここに謎があるのか・・・?
考える暇を兵士は与えてくれなかった。
「いやぁぁ!」
槍を構えてこちらに突進してくる
間合いが甘すぎる。
俺は剣を振るった。火炎をまとった剣は一振りで数人を倒していく。
それを見て兵士が警戒して間合いを広げる
「お・・・おい!あいつって・・・。」
「間違いない!「黒き火炎」だ!」
その名で呼んで欲しくはないが、敵が脅えたのならばそれでいいだろう
「援軍を呼べ!第二中隊だ!」
それを聞いて俺は確信した。
ここに・・・何かがある。



「ひ・・・ひぃぃぃ!!!」
もう15分たったかどうかだろう
俺は教会に包まれた熱気に耐えながら剣を振るっていた
俺の黒の長髪はこういう状況では暑すぎていけない。
奴らは援軍を呼んで教会に火を放ったのだ。
奴らが狙ってるものが燃えたりする事はないのか?
あまりいい手段とはいえない。
だが、老師がいる以上この大群から逃げるのは難しいか・・・。
「くそ・・・。」
老師は何か呪文を唱えてるようだが魔法で攻撃する気配もない。
一体何をする気だ・・・?
俺がふたたび剣を振るった・・・・その時

「老師に触るなァァァ!」
とたんに正門から声がして一人の少年が飛び込んできた
「!?」

そいつは2,3人の兵士を倒しながら俺に飛び掛ってきた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
俺はそいつの剣を受けると一歩下がる
この村の少年・・。
旅人の姿だが間違いないだろう
「待て!俺は敵じゃない!」
「信用なんて出来るか!」
そういうとその金髪小僧は連撃を放ってくる
荒っぽいが剣の振りが速い。
磨けばいい腕になる・・・が、そんなこと言っている場合ではない。

「はっ!」
俺はとにかくそいつを引き離す。
その時に初めて声が聞こえた。
「もう限界です!」
「仕方ない!一旦出るぞ!」
敵の兵の声・・・
そちらを振り向くと兵が次々と退いて行く。
次の瞬間ドスンという大きな音がする
まさか・・・
俺が後ろを振り向くと老師が柱の下敷きになっていた

「老師!」
金髪小僧はどうしたことか女の高い声になって老師に飛びついた。



――――――――――また守れなかったのか?――――――――――――




俺は今まさに永久に別れようとしている二人をただ静観していた。
心は・・・かなり荒れていたが
「わしは・・・ここの力を守る義務があった・・・。ここの力を引き継ぐ者が必要だった・・・。」
そういうと老師は静かにこっちを振り向いた
「来てくれた・・・その日に気づかれるとは思わなかった・・・。」
「なぜ・・・俺なんだ?」
その時に始めて気付いた。
あの時老師が唱えていた呪文はその力の封印を解く呪文だった。
戦闘中にそんな呪文を唱えるなんて思いもよらなかった。
「あなたは・・・この世界を変える人間だ・・・。こんなところで終わらせたくはない。」
またあの話か?
この世界を変えるって一体何のことだ?
俺は・・・ただの一人の人間だ。
「何を変えろって言うんだ!?俺が何を変えろって言うんだ!?」
涙が出ていた。
自分の存在に困惑していた。
世界が崩れていく気がした。
そしてなにより、何かが消えるのが怖かった。
「それは・・・あなたが思うように変えなさい。貴方が本当に求める世界を造りなさい。」
彼は女神に向かって身体を投げ出した。
「女神よ・・・この今を生きる者たちに幸運を・・・!」

光が駆け抜けた。
女神が眩いばかりの光を放っている
スファラが老師に飛びつくシーンがスローモーションのように感じる。
光が俺の中を通り抜け、包んでいく。

――――――――――――お前は何を求める?―――――――――――――

頭の中で声が響いた。
俺の望むものー

怒りの心があった。
老師を殺された憎しみ
自分の運命に対する憎しみ

答えた。
「目の前の敵を・・・倒す力を。」


「呼ぶがいい。我が名を・・・ペルソナを」



目の前で花火が散ったような激しいめまいがしてそれは姿を現した

黒と白の二つの色で分けられた仮面
黒いマントの中にははるかな虚空が詰まっている
背中に赤い翼が見える。天使の羽のようだが。



「目覚めたのか!?例の奴が!」
愚者どもの声が聞こえる。

右手を上げた。
ペルソナが放つ虚空は教会を消滅させ外にいる愚かな人間を消し去った。
心地よい気分だ。村は何かに引き込まれるようにして虚空へと消えていく
笑みを浮かべた。虫けらがいなくなった。とても静かだ。
そして、全てはなくなった。



「・・・さん!シグマさん!」
声が聞こえて俺はふと目を覚ます。
目の前にはあの少女・・・スファラが覗きこんでいた。
すぐに起き上がって周りを見渡す。
そこには村など既になかったかのように草原が広がっている。
「俺が・・・やったのか?」
とたんにすさまじい罪悪感が頭をよぎる
俺は彼女のふるさとを奪ってしまった。
しかも・・・俺は人を殺してすさまじい快感をえていた。
あれは召喚獣の力なのか?
「・・・・正気じゃなかったんですよね?」
え?といって俺は彼女の方を振り向く
「暴走してしまったんですよね?自分がコントロールできなくて」
彼女は自分を説得しているかに見えた。
「だって・・・老師が力を与えた人が・・・そんな人のはずが・・・」
「そうだ。そんなはずはない」
俺もまた、自分に言い訳をした。
あのときの俺はおかしかった。
狂っていたというか・・・召喚獣の影響?
全ては謎だ。
「・・・これからどうしよう?」
彼女は困ったように言った。
そうだ・・・。
俺がこの村を消してしまったんだ。
・・・この子だけでも守らなければ、生きている意味もなくなるかのように思える。
「・・・俺が守ってやる。俺が、旅のパートナーになってやるよ。」
そういうとスファラはなにやら一人でぎゃあぎゃあ言っていたがやがて
「・・・というわけで・・・お願いします。」
そういってひょこたんと礼をした。


・・・ペルソナ。
意味は「仮面」

奴の仮面の裏を見るのが恐ろしい。






2002年11月11日(月) 20時19分06秒 公開
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■作者からのメッセージ
合作二話目突入です☆
今回俺のほうが先に書いてストーリーを考えたんですがどうだったでしょうか?
面白いと思ってくれたら幸いです(無い)
ではこれからもよろしくお願いします

この作品の感想をお寄せください。
もう5点 5 アストラナガン ■2002-12-01 22:56:59 dialup-82.7.194.203.acc03-kent-syd.comindico.com.au
聖...感嘆したよ。読んでる時間を忘れていた気がします。心情、戦闘、風景どれもかれもよく巧みに書かれておりよかった。感情移入が入りやすい作品なんて久しぶりに会ったかな...もうなにも言うことはありません。どうか次の作もよい話しを作ってください。 5 アストラナガン ■2002-12-01 22:56:35 dialup-82.7.194.203.acc03-kent-syd.comindico.com.au
くわっこいい・・・・(感激中)ペルソナって召喚獣でしかも仮面?!村を一つは解しちゃうだなんてすごい威力だね・・。これからどうなってくのか・・楽しみにしてるよ! 5 まぎ ■2002-11-24 20:44:06 proxy1.uyasu1.kn.home.ne.jp
合作……。すごいですね。召喚獣ペルソナがとっても恐いです。これからがとっても気になります。頑張ってください! 5 ZNK ■2002-11-12 22:21:19 218.pool3.ipcyokohama.att.ne.jp
すっげ〜!合作おもしろいよ! 二つのストーリーが一緒になっていい! 5 侍忍者 ■2002-11-11 21:02:54 zaqd37895c8.zaq.ne.jp
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