SOUCE OF LIGHT5










NO.5 ≪ 陰と陽 〜中編2〜 ≫










 気の遠くなる様な昔…









 防護と破滅の存在を決めるのは









 天使と死神だった―――















<レイ…葉月=レイ>
「…ん」
 呼び声にうっすらと目を覚ました葉月は、辺りを見回す。
だが、周りにいるのは隣で自分の身体を後ろから抱きしめる形で寝ている唯だけ。
<外へ出てきてくれないか>
(…?)
 声の主に心覚えがあった葉月は唯を見るが、唯は熟睡していて目を覚ましそうもない。
「…唯、ちょっと出てくるね」
 唯の腕から抜け出して廊下へと出る。













 外へと出てきた葉月は夜明けの近い空を見上げた。
「よう、お久しぶり♪」
 そこには、満面の笑みで塀に座っていた堕天使・ルシファーの姿。
「ますます喰い甲斐のありそうな女に成長したな、レイ」
 敵意を示した言葉の混ざる彼に動じずに淡々と答える。
「何の用」
「おっと、これは手厳しい。わざわざ唯が寝てるときに来てやったんだ、感謝されたいね」
「私をからかいに来たって言うのね…」
「あはは、それ以外に何が?」







 依然として満面の笑みを絶やさないルシファーは、葉月の前に降りたった。
「アンタの御霊に用事があるんだって事もついでに分かってくれてるよな?」
「私の御霊?」
「そう、俺が死神に近づくには御霊喰いしなきゃならない」
「御霊喰い?何の事??」
「何だ?知らないのか、御霊喰いを」
  ただ、天使の御霊を食べるという行為ではないという事だけが分かる。
それ以上はいくらスーパーコンピューター並の頭脳を持った葉月でさえ考えられなかった。
「仕方ねぇな、教えてやるよ。御霊喰いはな、死神の本来の能力を最大限に引き出し、その上特殊能力を与えてくれるんだ」
「どういう…」
「つまり、俺が死神に昇格する為にお前の純潔過ぎる御霊を喰うって事さ」
「?!」
 御霊を喰べられるという事…即ち、その者の死を意味する。





「心配するなよ、すぐに終わらせてやるから………お前の兄貴みたいにさ」
(兄上…?!)






















 記憶の中に小さな過去が映る。
<あにうえ、はづきはりっぱなテンシになるの>
 まだほんの子供だった時の自分と銀髪に緋色の瞳の準青年が答えた。
<へぇ、何でだい?>
<はづきね、あにうえみたいなえらいテンシになってみんなをしあわせにするのッ>
<そうか。葉月は僕みたいな天使になりたいのか…>
<うん!>
 睦月=レイ。
それが彼の名前で、私の唯一の肉親だった人。
<でも、その為にはいっぱい勉強してないとなれないんだよ?>
<だいじょうぶ!あにうえさまがみててくれるからへいきだもん!!>
 彼の優しい言葉が完璧に甦ってくる。
今まで彼から訊いた事は忘れていない………ただの一言も忘れるわけにはいかなかった。
<僕が居るから葉月は寂しくないかい?>
<はづきはあにうえのことダイスキだよ!ずっと、ずっとダイスキ!!>
 そう言って、私は彼に抱擁を求めた事も幾つかあった。









<兄上、また空を眺めているんですか?>
 今度はもう少し成長した時の記憶。
よく仕事の合間、すぐ近くの草原で空を眺めていた彼を私は知っている。
………この時、彼の考えていた事も全て私は知っていたつもりだったのかもしれない………。
<葉月…?>
<はい>
<君は僕が居なくなったらどうする?>
<え?>
 急な事に私は目を丸くした。
何故そんな事を言われたかさえもその時は分からなかったから。
<僕が死んでしまったら、君は僕の死を悲しんでくれるかい?>
<当たり前のことを訊くんですね、兄上は>
<だって、気になるじゃないか>
 彼から言われる疑問は今なら分かる。
<悲しいですよ………きっと自分を失ってしまうと思います>
<そのくらい僕を尊敬してくれてるって事?>
<当然ですよ、兄上>
 その次の日、彼はある理由で亡くなった…。


















 記憶が甦ってきた事で、血が騒めくのに気づいた。
「まさか…」
「そう、あの時にお前の兄貴・睦月=レイの心がなかったのは俺の所為♪」
「貴方が…貴方が兄上を…」
「み〜んな俺の所為さ、アイツが狂った原因は全てな」
「兄上の敵!!」
 その言葉に後、ルシファーから無理矢理離れた葉月は憎しみのこもった瞳で詠唱を開始する。





『我 天空の聖都より来し者…』
 スッと舞う様に手を動かし始めた葉月を赤い光が鈍く照らす。
「ふぅん、召喚術…ねぇ」
 にやりと笑ってルシファーも詠唱を始める。
『我 天空の聖都より邪悪なる魔都に来し者…』
『来たれ陣 来たれ炎 暁の獅子よ 我が印に導かれ 我が前に疾せ参ぜよ…』
 流れる様な声と複雑な幾何学の紋様の印と共に、真紅の炎が現れ葉月を包み込んだ。
『邪悪なる光の矢よ 我が標的を貫け  ダークアロー!!』 
 一歩早かったルシファーの魔法が葉月にぶつかって葉月は大きく弾き飛ばされて壁へとぶつかる。



「ぁッ!」
「抵抗しなきゃすぐに終わるって言ってるだろ?」
 ヨロヨロと起き上がった葉月をまた抱き寄せて腰に手を回し、無造作に押さえつける。
「ふざけてこんな事すると思ってるのか?」
 痛みで声が出せない代わりに精一杯の抵抗をする。
「本当は、何故そうなったか知りたいんじゃないのか?最愛の兄の悲劇の真相を…」
 顎を強く掴まれて言わたその時…。



『地獄の番犬 ケルベロス!』
 最後の一行を詠んだ葉月の目の前に誇り高き咆哮と共に真紅の獣が現れた。
その姿は紛れもなく地獄の番犬といわれる炎の獣。
ルシファーはその2mはあろうかというケルベロスを見て、葉月を離した。
「な…!詠唱の途中が途切れても召喚が成功するだと?!」
[我は葉月様の言葉に主従するのではなく、葉月様の心に主従しておるのだ。この位、当然と考えてもらいたい]
 直接頭に響くその声は、気を辿るとケルベロスらしき獣から聞こえてきた。
いくらルシファーでも形勢の悪いこの状態から葉月の御霊を奪おうとは出来ないはず。
(厄介なモノ召喚しやがって!)



「わ…たしは…、今この子を制御、する精神力があ……りませ…ん。直ちに消えない…と、どうな………るかわか…りませんよ…?」
 息も絶え絶えの自分の元に来たケルベロスが、服従を誓う様にまるで猫か犬の様な感じで頬を擦り寄せてきた。
「何故だ…何故地獄の番犬のお前が一介の天使に仕えている?!」
[信じられぬとでも言うのか…?]
「当然だ!お前が天使なんぞに仕えるほど成り下がっているとは思わなかったぞ!!」
[吠えるな下等な堕天使風情が!]
 ルシファーに一喝するその姿は威厳に満ちあふれ、恥じた様子など微塵もない。
完璧に信頼を寄せていると思われる言葉も葉月が言った。
(考えられるのは唯が何かをした…唯…?)
 ハッとして声を張り上げる。
「まさか…奴が………唯の仕業か…?!」
「仕業…なんて言ってほしくないものだな」
「?!」




 聞こえた言葉に耳を疑いながらも振り向く。
「よぅ、ルシファー」
「ゆ・唯…!」
 今の唯の表情といったら、不機嫌丸出しの顔つきをしていた。
[唯様、今日も酷く機嫌が悪そうで…]
「あぁ…悪いさ、ケルベロス」
 確実に怒っていると思える表情で彼はそう言った。
「よくもまぁこんな早朝に起こしてくれたもんだな、ルシファー?」











<いいか、唯。大切なヒトは必ず、何が自分に起ころうとも護り通すのが男だ>
 俺が葉月と逢って不安にならなかった理由。
それが小さい時に聞いたこの言葉。
<親父も母さんを好きになった時にそうだったのか?>
<当たり前だ、ボケ。そうじゃなきゃお前はこの世に存在してねぇんだって分からんのか?>
 ん〜、と考えて唯は父である黒髪の大男に答えた。
<分かる訳ないじゃん、おれはまだ子供なんだぞ?>












(今ならアンタの言いたかった事、分かるぜ…。愛するヒトを護るのは大変なのかもしれねぇな)
「言ったはずだよな、葉月に触れるなって…触れたら滅却するって、な」
「…チッ…!」
「冗談で済む言葉だと思ったか?」





「そんなに葉月が奪いたいなら今奪ってみろよ」
 威厳のある態度で、悠然と構えをとる唯。
「…オレにゲームを持ち込んだ事、その身をもって後悔しろ」







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水希華蓮
2002年11月06日(水) 12時32分08秒 公開
■この作品の著作権は水希華蓮さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はい、お待たせなSOLです!!
今回もかなり苦戦しながら書きました…ってか利きの右に怪我っいうか火傷をした為もあるんですが…特に中指と薬指が痛いんです(号泣)
ま、そんな事いいか…気にせず流してやって下さい。


蘭麝サマ
 ごめんね、今回もお騒がせして。
キミが一番期待してくれてるのに…私って奴はどうしてこう進まないのか…(滝涙)
次回も頑張って書きますんで、ヨロシクです!!

ZNKサマ
 キミにもお騒がせしました。
どうして私って奴は…(以下省略)でも、今回は唯くんの中身がほんの少しバレてますんで、許して下さいな…。

ユタマチサマ
 詩に感想くれて有難うございます〜(喜)
次回もまた詩なんかを書いた時は見ていって下さい!!次回も頑張ります!!!

ヒカリサマ
 詩から一変して小説を書き始めましたね!!水希は毎回楽しみに待たせていただいてますよvvv
次回も頑張って書いて下さい!!

犬サマ
 今回は小説です。
壊れた詩?ネタがあれば書いてみますよ…あれば、ですが…。
キミも次回頑張ってな!!


次回作はもしかすると本編じゃないかも(?)なんで、期待してて下さい。面白くない場合は笑って許して下さいね!
それでは、水希華蓮でした〜。

この作品の感想をお寄せください。
ああ〜!違うの!間違えたのです。貴方様には、感服します。って、言いたかったの! 5 ■2002-11-08 19:55:32 nc2ml306.drm.edu.net-kochi.gr.jp
unn. 1 ■2002-11-08 19:52:58 nc2ml306.drm.edu.net-kochi.gr.jp
遅いレスでごめんなさい!!素晴らしい文でしたっ!がんばれ〜負けんな〜っ!(何に) 5 紫水 ■2002-11-08 15:57:00 taiheiyo.taiheiyo.ed.jp
ひえ〜、ごめんね、ちょっとおそレス(^^;詠唱とかマジでカッコイイっすよ!!俺も早く見習いたい(^^)しかしウィングも好きだけどケルベロスもサイコー!!(><♪)(←動物ならなんでもいい)ネコちゃんイヌちゃん、もうなんでも大歓迎!!次回も頑張って〜!! それとメールだけど今こうして感想かいている時間も本当に貴重なほど、PC使えなくなってしまいました(T。Tもしかしたら当分PCに触ることすらできないかもしれないので、ごめんなさい。使えるようになったら即急知らせますんでご了承願います。迷惑かけてごめんなさいね〜…。では〜 5 蘭麝 ■2002-11-08 15:39:03 139.134.63.153
どうも〜♪唯君がとっても格好良かったです。ナルホド、唯君は朝に弱く、しかも寝起きが悪いんですね!?(←違)大切なものを守ろうとする唯君がなんだかいつもより凛々しく見えますw ではでは、次回も頑張ってください! 5 ZNK ■2002-11-07 00:46:14 69.pool3.ipcyokohama.att.ne.jp
単刀直入、ウィングサイコ〜♪ こんな猫ちゃん欲し〜♪ ってなわけで、今回出番なしで残念。次回期待。 ルシファー大胆。いきなり抱き寄せとは(笑)。など、がんばれ! 5 ユタマチ ■2002-11-06 23:59:32 m141251.ap.plala.or.jp
でば!!こんにちは!唯くんがかっこいいですよね〜、キャラ的にはまりましたよ唯くん☆(怖!!)ファンになっちまいそうだ〜っ!!これからも頑張ってください!!影ながら(フフフ)応援してます!! 5 ヒカリ ■2002-11-06 14:39:09 taiheiyo.taiheiyo.ed.jp
合計 31
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