【妖星乱舞】『第2部』No.9 |
ヒト それは どうせ遊ぶだけ遊べば結局死ぬような 弱い奴等なんだ けどな それを正直に認め 残された命を大切に使える奴 それは強い野郎だ It has been raining heavily all day そう That's how I am. 結局上辺だけ強がってよ 少しだけの時間をダラダラ持てあますような野郎 そいつはきっと弱いのさ だから俺は 強い人間でいたい 信じる 信じよう human love A mortal アイを すべてを 『Break The Curtain 2ndシングル「a human being」より抜粋』 side・ASH。【記憶と秘密と妖しい星】 おとうさん、おとうさぁん!! 果てしなく遠い地平線の向こう、花畑の広がる大パノラマ。何処かから、幼く高い声が木霊す。 その空にも負けない程に拾い花畑に軽く腰を下ろしている青年の元に、小さな少年が転がり込んだ。 「お父さんっ、お父さんっ!!」 「…ん、どうした?アッシュ。あれか、また絵本読んでほしいのか?」 どうやら先程の声は、この少年のものだったらしい。 5、6歳程の小さな少年は、優しい物腰の父親を見上げて首を振る。 「ううん。オレね、一生懸命とっくんして、勉強してね~、お父さんみたいな人になるんだっ!!」 「…」 そう言って人なつこく少年は笑った。が、先程まで幸福にまみれていた父親の顔が、ふとぴしりと凍る。 その変化に違和感を感じたのか、少年は不思議そうに小首をかしげてどうしたの、と問いた。 「…いや」 一瞬きらりと光った眼鏡を押し上げて、 父親の顔が元の柔らかい表情に戻る。 「帝国研究兵士のことかい?」 「そうそうそれっ!!研究も出来て、闘いも出来るだなんて凄いでしょ?」 「…ああ…そうだな…。……アッシュ。」 「なあに?」 「兵士ってのはね、あんまりいい役割じゃないんだよ」 父親は小さく苦笑した。その言葉に、ずっとその役柄に憧れを持っていたらしい少年は、ふっと驚愕の表情を浮かべる。 そんな顔の少年の頭を、父親はその大きな手で包み込み、優しく撫でた。 「お母さんだって…同じだ。お前を元気に育たせるために、頑張って闘っているんだよ」 「おかあさんも…」 少年が感嘆する。 「アッシュ。出来れば、お前には僕みたいにならないでほしい」 「どうして?オレ、お父さんみたくカッコ良くて、頭も良くて強いなりたいよ!!」 「…でも、ダメなんだ」 「なんで?帝国のやってる事って良い事なんでしょ?どうしてお父さんみたくなっちゃいけないの?」 「…良い事、ね」 必死に食い下がる我が子の言葉に、父親は明らかに苦笑いを浮かべる。 だがそれも親の前ではただのワガママ。父親はゆっくりと少年を抱き上げ、その透き通った瞳で少年を見つめた。 「アッシュ。帝国には絶対に手を貸してはいけない」 「…おとうさん…?」 「人にとっては良い事をしているのかもしれない。でも……」 そこで言葉を止め、何かを呑み込むように父親は目をそらす。が、しばらく間を取って言葉を出した。 「いいかアッシュ。忘れるな。帝国の……【フォース】の存在を忘れるな。そして……」 「ふぉ~す?」 ぶわっ!! 少年が首をかしげて聞き返した瞬間、激しく大きな突風が彼等の間を通り、大量の花びらを巻き上げていく。 首や頬に花びらがかすめていくのを目を細めて、少年は必死に父を見つめた。 「 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 」 「え……?」 ぶわっっ!! 青い空に、花びらが舞って……最後には 消えた。 騒ぎがやっと収まったホテルの一室で、きらりと大きな瞳を上げながらツヴァイが、ケリッシュに現状を確認する。 「ケリッシュ。王国の動きはどうなっていますか?」 「はい……。所属のINPで調べた所、戦闘部隊はまだ動いておりません。が、やはり情報部と機密部の方が動き始めている様です」 INPとは、軽く小洒落たデザインの『サングラス』をモチーフとし、その形状に娯楽の「ネット」の機能を注ぎ込んで埋め込んだ、最高機能テクノロジーのことだ。 そのなかなかシンプルで機械的なデザインの中には、検索、娯楽サイト、ニュース、オークションなどあらゆる設備を貯蓄しており、他にも音楽を聴けたり、人とまるで電話のような喋れたり、写真を撮れたり、手紙や書類を送れたりなど様々な分野に使う事が出来る。 「機密部まで動いて…!? やはり…。そんなに【フォース】が怖いのですね」 (フォース?) 危機としたツヴァイの言葉に、俺は僅かに眉をひそめた。 フォース。以前、聞いたことのある言葉。 『いいかアッシュ。忘れるな。帝国の…【フォース】の存在を忘れるな。そして……』 「…『オリメントを忘れるな』…」 「え?」 「…いや」 ばっと顔をあげたツヴァイに、俺は曖昧に応える。 聞き覚えのある言葉に、俺は無意識に記憶をたどっていた。途絶える事の無い、遙か15年前の記憶を。 あの頃は、いつでも果てしない大地を走っていた。木製の剣の玩具を片手に、ゆっくりと歩く父親の後ろ姿を追い続けていた記憶がある。小さな小さな記憶を。 「ねぇツヴァイちゃん、一つ聞いていいかな?」 「はい?」 先程から聞きたくて仕方なかったのか、覆った間にすかさずロレインが口を挟む。その問いに、ツヴァイは小首をかしげて可愛らしく問い返した。 「あのさ、さっき…ケリッシュ、さん?がいきなり現れたとき、ツヴァイちゃん凄く驚いてたでしょ?あれは何で?」 「ああ、その事ですか…」 その問いにツヴァイは何故か安堵のため息をつき、ちらりとケリッシュに視線を移す。そのコンタクトを読みとったケリッシュは、白いコートを翻して口を開いた。 「以前、僕は……「市民」として登録を抹消されたんだ」 「え?登録抹消を?……ということは」 「ああ。僕は…正しくは神谷仁という人間は、【この世界にいない】と確認されていた」 登録。それは、一種の個人情報でもある。 世界の政権を握る帝国の国家級重要資料の中に、この「市民登録」とは存在する。市民というのは名ばかりで、「この世に存在している」事が確認されている人間は全て、生年月日や出身地、挙げ句の果ては身体能力まで事細やかに情報として登録されてしまうのだ。 それが抹消されたという事は…イコール、死亡が確認されたということに値する。 「私は以前、ケリッシュに…王国と帝国の裏事実を探る為、機密部への【侵入(クラスハッキング)】を試みさせました。けれど、その時ケリッシュは帝国の部隊に見つかり…」 ツヴァイがすっと瞳を伏せ、言葉を紡ぐ。それを悲しそうに眉を歪めて聞いていたロレインだったが、重要な事を忘れていたのに気づき、はっと口を開いた。 「え、ちょっと待って!!なら、どうしてここにケリッシュさんがいるの?」 「神谷流奥義【 闇隠れ 】。全てを闇の世界に閉じこめ、声、姿、息の音すらも見えない、いわゆる「空気状態」になる技を、殺されそうになる直前で使ったんだよ」 「成る程。だからなんとか逃げおおせ、殺したと勘違いした兵士が状況を機関に説明、ケリッシュは死んだ者とされちまったってワケだな」 黙って話に耳を傾けていたレイが、納得という風に手を叩く。この分かりやすい説明には、俺も納得せざるを得なかった。 だが俺は、やはりそれでも疑問を捨てるわけにはいかなかった。 何故ツヴァイが王国を抜け出してまでここにいるのか。いつ自分を連れ戻すかもしれぬ帝国に行きたいと頼んでくるのか、この変化は何なのか、結局彼女は何者なのか…。 この二人が強者だという事は、先程の戦闘から見て漠然としている。なのに何故。 そう思い、僅かに顔を指先で押さえた。とその刹那、俺はあることに瞬発的に気づく。 「………」 「…」 見つめられている。 無論、ツヴァイに。 俺は十分間を取って、ツヴァイの方に顔を向ける。するとツヴァイはにっこりと笑って、目を開いた時にもじっと、俺の瞳を見つめ続けている。 何十層もの光りを放つ銀色の瞳が、まっすぐ俺の瞳に語りかけている。 (何故、シ・クラベスを知っているのです?) (………) 先程の、俺が呟いた「オリメント」という名の問いだ。 俺は、彼女の外見上は柔らかく、けれど内面は鋭く刃物のような強さを持った視線からは決して逃れず、逆にこちらから見つめるかのように彼女を見つめ返した。 端から、レイがなんだ、何が起きてるんだと声を上げたが、俺達はその問いに答えなど出さない。 出さずに、ただひたすら相手の瞳に語りかけた。 (応えなさい。さもなくば……もはや貴方の命は、捕らわれた鳥とでも思ってください) そんな力なんてあるのか?と俺は心の中で彼女を凝視する。 が、そんな俺の怪訝な瞳を見つめて、彼女はそんな思いさえも一掃させるような真剣な瞳が、まっすぐこちらを捕らえていた。 どうやら、嘘では一一一なさそうだ。 (…分かった…。話す。話せば、お前も話してくれんだろ?) 俺は瞳に込め、眉をあげる。 その瞳に、彼女は諦めたように瞳を細めた。 (…約束、します) (ああ……そうだな…。その名を知ったのは、まず……俺の母さんの事から話そうか) 俺は一回言葉を止め、十分に間を取ってから…彼女の、驚いたような瞳を見つめた。 (俺の母さんは、帝国騎士だったんだ) 【トゥ・ビ・ コンテニュゥド。キニナルジカイヘ、ヨウセイランヴ。】 |
欅
2002年06月06日(木) 21時14分09秒 公開 ■この作品の著作権は欅さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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はぁ~、やはり素晴らしいですv英語とか、歌とか、尊敬です!!嗚呼、生で聞いてみたい・・!専門用語とか、自らの世界を作っていけるってすごいです!次も頑張ってください! | 5点 | シゲ | ■2002-06-23 14:03:03 | 203.165.11.71 |
こないだチャットで会って呼びタメ許してもらった・・・と思います。ので、今回からタメで!うん、とっても設定が面白いよ!どう続くのか、これからも期待っす! | 5点 | 翡翔 | ■2002-06-07 17:37:55 | 211.122.43.210 |
やほーーーー!!!あうう~~~!すごいなぁvホントに話が練られてて読む人をひきつける文章でさすがって感じーー!!(えらそーに言うな) | 5点 | セリカ | ■2002-06-07 14:31:32 | 61.201.222.55 |
はぁぃ!?ごめん、俺もうレスしないほうがいい!?あのね、某Mちゃんと話しててね、「俺は欅や鳳のような凄い人にレス入れていい存在なのかなぁ」って。思ったの。まだまだ未熟者だし。レスが本文に追いついていないっていうかね。。そんなこんなで微妙なレスだけど・・・、ホント、上手いと思ってます。ごめんねぇ↓。 | 5点 | 蓮麗 | ■2002-06-06 23:13:57 | 218.47.25.239 |
ああもうまたやっちまったよぅ。あのね、某 | 1点 | 蓮麗 | ■2002-06-06 23:12:04 | 218.47.25.239 |
うっわごめん・・・ひさしぶりにやった・・・。ん・・・っと、やっぱり良いね妖星乱舞。ほんとにね、凄くいい話だと思うの。だけどね、 | 1点 | 蓮麗 | ■2002-06-06 23:11:52 | 218.47.25.239 |
nn/// | 1点 | 蓮麗 | ■2002-06-06 23:10:04 | 218.47.25.239 |
~-~)てか、母さんが帝国騎士!気になりますねーオリメント?勉強いたします。 | 5点 | みかど | ■2002-06-06 22:06:58 | 61.123.78.134 |
~-~)凄いですよね。文章うまいっすよ。謎の女性の謎の仕方っていうのかな?これもいい感じかと。INPって設定も面白いっす。終わり方も独特で何か、好き。 | 1点 | みかど | ■2002-06-06 21:59:18 | 61.123.78.134 |
合計 | 29点 |
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